松村 明 様 【筑波大学附属病院病院長、筑波大学医学医療系脳神経外科教授】

2012.08.23

プロフィール
名前:松村 明(まつむら あきら)
筑波大学附属病院副病院長、筑波大学医学医療系脳神経外科教授
1954年 東京都出身
1980年 筑波大学医学専門学群卒業
1980〜1984年 筑波大学附属病院外科・脳神経外科レジデント
1984〜1986年 西ドイツ、ゲッテイゲン大学脳神経外科助手
1986年 英国ロンドン大学国立神経病院神経内科臨床研修コース修了
1987〜1988年 秦病院脳神経外科医長
1988〜1990年 筑波メデイカルセンター病院脳神経外科医長
1990〜1992年 総合守谷第一病院脳神経外科部長
1992〜2002年 筑波大学臨床医学系講師
1995年 ドイツ、マックスプランク生物物理化学研究所客員研究員
2004年 筑波大学臨床医学系・大学院人間総合科学研究科教授
2007年〜 筑波大学附属病院副病院長(この間、陽子線医学利用研究センター長、総合臨床教育センター長、臨床研究推進・支援センター長を歴任)
2011年〜 筑波大学医学医療系教授
2011年〜 筑波大学欧州事務所(ボン)所長
2012年〜 筑波大学附属病院国際連携・国際戦略総合特区担当特任副病院長

◆プロフィールを拝見しますとドイツとの関わりが多いようですが、そもそもドイツとの関係を持つようになったきっかけは何だったのでしょうか。

父親が商社勤務だったため、小学校入学前までは英国、小学校は日本、中学校はドイツで過ごし、帰国子女として第一外国語でドイツ語を学べる獨協高校に編入しました。したがって、大学受験もドイツ語で受験しました。教員になってからも専門語学で長年医学ドイツ語の授業を担当してきました。

その後、筑波大学の第1回生として入学しましたが、当時は東大通りも西大通りもなく、かろうじて土浦学園線が花室交差点までできていた程度で、そこから先は旧道しかありませんでした。平砂宿舎と追越宿舎の間が石下行のバスが通るメインストリートでした。1年位して現在の筑波大学附属病院の建築が始まり、徐々に環境整備が進みました。

当時建設中の筑波大学附属病院の前で愛車のシビックに乗ったところ
当時建築中の筑波大学附属病院の前で、愛車のシビックに乗ったところ

 
◆ゲッテイゲン大学脳神経外科助手、マックスプランク生物物理化学研究所客員研究員としてドイツに赴任された際は、それぞれドイツ学術交流会(Deutsche Akademische Austausch Dienst:DADD)奨学金、Alexander von Humboldt(AvH) 奨学金を利用されたと伺いました。

ドイツは国家戦略として研究交流、ドイツ語学の普及に努めています。ドイツ学術交流会(Deutsche Akademische Austausch Dienst: DAAD)は主に学部学生から大学院生・若手研究者の留学をサポートする組織で、世界中から文科系、理科系、芸術系など幅広い留学生を受け入れています。本格的なドイツでの留学生活の前に最大6か月間のドイツ語研修をドイツ国内のGoethe Institutで提供し、授業料と生活費のサポートまでしてくれます。したがって、DAADの奨学生はドイツ語をマスターし、留学生活を終えた後もドイツ・サポーターとして日独の交流に貢献していることが多いです。

私自身もDAADのサポートを受け、ドイツの大学病院で臨床研修・研究を行いましたが、ドイツはシステム作りも上手く、救急医療のためのドクターヘリも既に30年以上前にドイツ全土に整備されておりました。夜間飛行や高速道路上への着陸なども通常に行っており、海外に行って色々と学ぶ点は多いので、若い方々にもぜひ海外経験をしていただきたいと思います。


ドイツの大学病院のドクターヘリの前で

 
そのような思いから、実際に私も自分の研究室の所属員をこれまで8名ドイツに留学させており、これは国別留学先としては最多です。他には米国、カナダ、フランスなどへも留学させています。

またドイツには、博士取得後にはAlexander von Humboldt (AvH)という奨学金があり、40歳以下の若手研究者がドイツへの研究留学ができる制度があります。このAvH財団の奨学金は待遇が非常に良く、生活費と交通費以外に研究費や図書費の配分、ドイツ国内へのexcursion、さらには年に1回AvHの集まりを開催しますが、ここにはドイツの大統領が自ら出席して留学生との交流を行います。私も当時の大統領であったRoman Herzog氏から自分のAvH参加ネームカードにサインをいただき、今でも記念として大事にとってあります。このようにドイツは国策としてドイツに多くの優秀な若手研究者を招聘して、科学技術力を高めようとしております。

Villa Hammerschmidtという迎賓館に留学生を招いてのドイツ大統領(当時)挨拶
Villa Hammerschmidtという迎賓館に留学生を招いてのドイツ大統領(当時)挨拶

 
私はDAADで臨床留学した後に再度AvHでドイツのマックスプランク研究所に研究留学をさせていただきました。マックスプランク財団はドイツ全土に多くの研究所を持っており、広い分野で研究を展開しています。一つの研究プロジェクトが終わるとまずその研究室を解体して、新規の分野を立ち上げてノーベル賞級を狙える研究者を世界中からリクルートしてきます。そのような意味では大変厳しい競争があり、ボスの定年に伴って研究職を失った友人もおりました。

マックスプランク研究所の看板の前での写真
マックスプランク研究所の看板の前での写真

ちなみに筑波大学では2010年に筑波大学欧州事務所をボンのDAAD本部棟内に開設しました。DAADと筑波大学は協定を締結して筑波大学側の研究者とドイツの大学・研究所との交流プログラムを開始しております。このようなプログラムをDAADが日本の個別の大学と交流協定を締結するのは国内で初めてのことであるためDAAD側の期待も大きく、筑波大学の国際交流にもさらに大きく貢献できることが期待されます。

 

◆筑波大学基金は2010年4月にスタートした新しい基金です。欧米と違って日本では寄附文化はなじまないという声もありますが、ドイツと比べて日本の大学基金はどのように映りますか。

確かに日本ではこれまで寄附行為があまり広まっていなかった側面はありますが、最近では「ふるさと納税制度」などのように自分の出身地への寄附行為が可能になったり、平成19年には京セラの稲盛和夫会長が設立した「稲盛財団」が京都大学に3階建て(9,000㎡)の教育・研究交流推進中核拠点を寄附したことも話題になりました。寄附行為はこれまでややもすると日本の文化になじまない側面がなかったわけではありませんが、今後は社会貢献・地域貢献のための寄附行為が多くなってくるのではないかと思います。

また、「寄附金」としてはやはりある一定の目的が明確になっているほうが比較的理解が得られやすく、自分の出身高校・大学から新校舎建設や記念会館の寄附のお願いが来るとやはりOBとしては協力しようという気にもなります。筑波大学でも「嘉納治五郎生誕150周年記念事業に関する募金」や「東日本大震災義援金」などは寄附の集まりが良かったと聞いておりますので、今後ともそのような目的をはっきりさせた募金事業が展開されることを期待しております。


◆筑波大学基金では支援項目の一つとして今年度から附属病院支援事業(病院寄附金)を新たに掲げました(※)。従いまして松村先生は附属病院副病院長として、今後は本寄附金により支援を受けるという立場でもあります。

私は英国ロンドン大学のNational Hospital for Nervous Disease at Queen Squareで臨床研修を行ったときに人名を冠した病棟、臨床講堂などが随所にあり、その場所の前には寄附者の名前と年月日が記載されたプレートが飾られていたことに「寄附文化」の真髄を見たような気がしました。例えば筑波大学附属病院の中に「筑波太郎記念病棟」であるとか「茨城次郎記念ホール」といったものがあるというのが一つの例になるかと思います。やはり寄附行為に対しては受ける側の感謝の気持ちを表すことが大変重要なことであると思います。筑波大学附属病院でも寄附行為を行っていただいた個人や団体に対して何らかの御礼の気持ちを表すことを考慮中であり、そのようなご厚意に報いてより高度で良質な医療の提供に向けて職員・教員が取り組んでいける環境が整備されると良いかと思います。

筑波大学附属病院では平成24年12月に新しい診療棟がオープンします。名前は「けやき棟」という親しみやすい名前になっており、これまでのA,B,Cというアルファベット棟からは少し脱却したように思います。けやき棟の一階には五十嵐病院長の発案で「市民交流プラザ(仮称)」が設置されます。ここには附属病院の歴史や診療内容などを紹介するコーナーなども設け、さらには市民講座や各種のイベントを行うような地域社会や住民に開かれたスペースとなる予定です。このような場所を整備するためにも附属病院では「寄附金」の受け入れなどを募集しております。パンフレットを整備して寄附金の使い方、税制上の優遇措置、申し込み方法などを記載しており、附属病院のホームページから入手できるようになっております。また、ご寄附をいただいた方々のお名前を病院内に掲示することも計画しております。筑波大学附属病院としては高度な医療をはじめとし、地域や社会との接点を大事にしていきたいと思いますので、皆様のご理解とご支援をいただければと考えております。


※筑波大学基金は支援項目の一つとして2012年4月から附属病院支援事業(病院寄附金)を新たに掲げました。詳細はこちらをご確認下さい。
https://futureship.sec.tsukuba.ac.jp/prospectus/index.html
https://futureship.sec.tsukuba.ac.jp/prospectus/use.html

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