西川 綾子 様 【水戸市植物公園園長】

2014.7.2
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プロフィール

名前:西川 綾子(にしかわ あやこ)
水戸市植物公園園長
1960年 東京都出身
1979年 筑波大学第二学群農林学類入学
1983年 筑波大学第二学群農林学類卒業、株式会社日比谷花壇造園土木入社
1986年 株式会社日比谷花壇造園土木退社、株式会社新企画入社
1987年 株式会社新企画退社、水戸市植物公園の開園にあたり水戸市役所に入所
1991年 NHK趣味の園芸講師として草花の解説を行い、現在も継続中
1992年 水戸市植物公園長になり、現在に至る。
2009年 第14回NHK関東甲信越地域放送文化賞を受賞
2012年 一般社団法人茗渓会理事になり、現在も継続中
2014年 公益社団法人日本植物園協会理事になる。

◆筑波大学のおもしろさ
 私が入学した1979年の筑波大学は、キャンパスの中に居酒屋や梨畑がある(ように見えた)、どこからどこまでが 大学なのかわからない、やたらに○○センターが存在する不思議な大学でした。でも今は、この大学を選んで良かったと心から思っております。そこで私の筑波 大学おすすめベスト3をあげてみましょう。

1.勉強するなら最適。総合大学なので何でもあって、何でも学べる。
 農林学類の私でも考古学概論を受講できました。考古学にも憧れていたので、古墳についての講義を受けられたことが、うれしかったです。
 卒業研究は農林技術センターの温室で行いました。農場ではアルバイトもしていたので4年間通い、私には故郷的存在です。同級生はテーマの関係で他の研究所に通っていましたから、筑波大学の環境をうまく利用すれば、他ではできない研究ができるハズ。

2.身近で過酷な自然を満喫。根性がつきます。
 どこからどこまでが学校なのかわからない広大なキャンパスゆえ、4年間を自転車で過ごし、植物ウォッチングには最適でした。キャンパス内にシュンラン、アマナ、タヌキマメなどの可憐な野草が咲いていたし、そんな植物を探しに松林を歩くのがとっても楽しかったです。
 一方、過酷な自然も体験しました。雨の日は真っ赤なカッパを着て自転車に乗って通学。冬は筑波おろしの冷たく自転車が動かないほどの強風に負けず自転車をこいだおかげで、根性と強靭な身体を手に入れる事ができました。

3.いつも友人がいる
 1・2年は一の矢宿舎で過ごしました。全国から個性豊かで、何かしら志をもった人たちが集まっていました。方言もあ るし行動パターンも違うので、 最初の数ヶ月は驚きと発見ばかり。受験勉強で周囲がライバルだったのが当たり前の環境から、宿舎生活では「みんなで勉強し て単位を取ろうね」と、勉強会をしたのもよい思い出です。3年になってアパートに引っ越しても、仲のよい友人二人が隣室でしたから「綾ちゃん、いる?」と いつも誰かがやってくる毎日でした。卒業後に再会しても他の友人たちとは違う、まるで親戚に近いような感覚があるのは、いつも一緒に時を過ごしたからなの でしょう。友人は私の人生の宝物です。

◆ こんなことに活かされて
 現在、水戸市植物公園に勤務して27年目。一昨年から水戸市内にあるイングリッシュガーデンの再生事業にも関 わっています。その再生プログラム作成に、筑波大学芸術専門学群の鈴木雅和先生に声をおかけしました。幅広くご指導をいただいておりますが、英国庭園史の 解説がわかりやすくて素晴らしい。修士論文で取り組んでくれた学生さんや仲間の女子たちは頼もしく、やはり何でも学べる筑波大学だからこそ、こんな事業が 一緒にできたのだろう、と母校に感謝。
 そのガーデンではボランティア約80名と共に秘密の花苑の管理をしています。雨が降っても真っ赤なカッパを着て花の手入れをしているのは、雨の日でも自転車をこいで培った根性のおかげでしょう。
  植物公園では、そんなボランティア組織に加入する人たちは約200名。楽しく学んでお友達を作ってもらい、「来て良かった」と言ってもらえるよう、毎回 通ってくる喜びが得られる工夫を私なりに努力しています。人と人とのコミュニケーションは、学生時代の友人たちやサークルの先輩や後輩たちと過ごしたこと が、とても役に立っているように思えます。

◆ 好きなことを続けて
 大学卒業後はつくばから東京に戻り、日比谷花壇の造園部で花壇設計から現場の手配などを担当し、都内の花壇や植物園を駆け回る毎日を送りました。
 園芸雑誌の編集にも憧れていたので、次に洋ランの専門誌の編集者に転職しました。園芸を専攻しても洋ランのことはさっぱりわからず、第一線の方からご指導をいただいたおかげで、ランについて深く学ぶことができました。
  数ヶ月後に「水戸で植物園を造るから行かない?」大学の恩師から連絡があり、すぐに水戸行きを決め、あと3年で30年が経過するところです。植物園の世界 で30年も勤務した女性はいないのではないか、というほど珍しいケースで、現在記録を更新中ですが、好きな事ができるから、続ける事ができました。
 水戸市植物公園に勤務してから4年後にNHK「趣味の園芸」という、今もEテレで日曜日の朝に放映される長寿番組に初出演し、現在も継続しています。
  当時は女性の園芸家が少なく、「これからは女性園芸家に期待する」という座談会も開かれ、テキストにも掲載されました。それほど園芸界に女性はいなかった のです。経験不足で、不安でいっぱいでした。テキストの原稿を書けば恩師にチェックをしてもらい、こんなことを話していいのか心配で研究室の先輩方にもア ドバイスを受けました。
 「なぜ、今、この作業をするのか。暗記させるのではなく、理由を説明して理解させるように。」と恩師からアドバイスをい ただいた言葉を、今も大切にしています。最初は緊張のあまり硬い顔つきで出演していましたが、最近では笑顔で解説できるほど図太くなりました。あこがれの 番組に、もう20年以上出演させていただけて、大変光栄に思っています。
 好きな事を一生懸命続けていたら、あっという間に時間が経っていました。

◆これからも筑波大学と
 今ここに、在学中の「農林技術センター要覧」があります。なんて樹木が小さいのでしょう。広大な土地に広い空。園 芸はもちろん、畜産の水牛の世話からトラクターなど農業機械など、贅沢な実習メニューでした。当時は、すみませんが先生方のご苦労は全くわかっていません でした。卒業してから、この贅沢な授業内容を理解し、申し訳なく思っています。趣味である園芸について理論的に学べ、素晴らしい先生方から愛情に満ちた最 高の教育を受ける事ができ、心から感謝しています。
 大学で好きな事を学べ、社会にでてからも仕事として携われるのは幸せなことです。学んだこと を植物公園やガーデン、趣味の園芸に活かし、少しでも花が好きな人が増えますように、さらに筑波大学を盛り上げるお手伝いができればうれしいです。社会で 活躍している卒業生が、大学の講座やシンポジウムで参加し、現役の筑波大生と出会える仕組み作りがあると、筑波大学ファミリーが社会に貢献できるチャンス が増えるのではないでしょうか。私的には、大学の構内にぜひイングリッシュローズをはじめ、季節の草花を植えていただきたいです。喜んでお手伝いに行きま すから。先輩、後輩、みんなで筑波大学をもり立てて、ここから社会に素晴らしい花を提供できますよう祈っています。


茗渓会主催のガーデニングに関する公開講座を予定しております。
* 日時:2014年11月29日(土)14時
* 場所:つくば研修センター
* 講座名:「年末年始に楽しむ冬の寄せ植え」
* 主催:一般社団法人 茗渓会
 なお,2013年の講座「この秋楽しむ宿根サルビア」の様子は,次のアドレスでご覧いただけます。
 http://www.meikei.or.jp/post/853.html

1980年9月20日:自然研究会で野草を食べる会を開催.jpeg
【1980年9月20日:自然研究会で野草を食べる会を開催。一の矢宿舎20号棟前のヒメリンゴの下で撮影。タンポポコーヒー、野草の天ぷらなどを試食しました。】

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【1982年版農林技術センター要覧】

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​​​​​​​【近況:七ツ洞公園 秘密の花苑 にて】