父親が商社勤務だったため、小学校入学前までは英国、小学校は日本、中学校はドイツで過ごし、帰国子女として第一外国語でドイツ語を学べる獨協高校 に編入しました。したがって、大学受験もドイツ語で受験しました。教員になってからも専門語学で長年医学ドイツ語の授業を担当してきました。
その後、筑波大学の第1回生として入学しましたが、当時は東大通りも西大通りもなく、かろうじて土浦学園線が花室交差点までできていた程度で、そこ から先は旧道しかありませんでした。平砂宿舎と追越宿舎の間が石下行のバスが通るメインストリートでした。1年位して現在の筑波大学附属病院の建築が始まり、徐々に環境整備が進みました。
ドイツは国家戦略として研究交流、ドイツ語学の普及に努めています。ドイツ学術交流会(Deutsche Akademische Austausch Dienst: DAAD)は主に学部学生から大学院生・若手研究者の留学をサポートする組織で、世界中から文科系、理科系、芸術系など幅広い留学生を受け入れています。 本格的なドイツでの留学生活の前に最大6か月間のドイツ語研修をドイツ国内のGoethe Institutで提供し、授業料と生活費のサポートまでしてくれます。したがって、DAADの奨学生はドイツ語をマスターし、留学生活を終えた後もドイ ツ・サポーターとして日独の交流に貢献していることが多いです。
私自身もDAADのサポートを受け、ドイツの大学病院で臨床研修・研究を行いましたが、ドイツはシステム作りも上手く、救急医療のためのドクターヘ リも既に30年以上前にドイツ全土に整備されておりました。夜間飛行や高速道路上への着陸なども通常に行っており、海外に行って色々と学ぶ点は多いので、 若い方々にもぜひ海外経験をしていただきたいと思います。
そのような思いから、実際に私も自分の研究室の所属員をこれまで8名ドイツに留学させており、これは国別留学先としては最多です。他には米国、カナダ、フランスなどへも留学させています。
またドイツには、博士取得後にはAlexander von Humboldt (AvH)という奨学金があり、40歳以下の若手研究者がドイツへの研究留学ができる制度があります。このAvH財団の奨学金は待遇が非常に良く、生活費 と交通費以外に研究費や図書費の配分、ドイツ国内へのexcursion、さらには年に1回AvHの集まりを開催しますが、ここにはドイツの大統領が自ら 出席して留学生との交流を行います。私も当時の大統領であったRoman Herzog氏から自分のAvH参加ネームカードにサインをいただき、今でも記念として大事にとってあります。このようにドイツは国策としてドイツに多く の優秀な若手研究者を招聘して、科学技術力を高めようとしております。
確かに日本ではこれまで寄附行為があまり広まっていなかった側面はありますが、最近では「ふるさと納税制度」などのように自分の出身地への寄附行為 が可能になったり、平成19年には京セラの稲盛和夫会長が設立した「稲盛財団」が京都大学に3階建て(9,000㎡)の教育・研究交流推進中核拠点を寄附 したことも話題になりました。寄附行為はこれまでややもすると日本の文化になじまない側面がなかったわけではありませんが、今後は社会貢献・地域貢献のた めの寄附行為が多くなってくるのではないかと思います。
また、「寄附金」としてはやはりある一定の目的が明確になっているほうが比較的理解が得られやすく、自分の出身高校・大学から新校舎建設や記念会館 の寄附のお願いが来るとやはりOBとしては協力しようという気にもなります。筑波大学でも「嘉納治五郎生誕150周年記念事業に関する募金」や「東日本大 震災義援金」などは寄附の集まりが良かったと聞いておりますので、今後ともそのような目的をはっきりさせた募金事業が展開されることを期待しております。
私は英国ロンドン大学のNational Hospital for Nervous Disease at Queen Squareで臨床研修を行ったときに人名を冠した病棟、臨床講堂などが随所にあり、その場所の前には寄附者の名前と年月日が記載されたプレートが飾られ ていたことに「寄附文化」の真髄を見たような気がしました。例えば筑波大学附属病院の中に「筑波太郎記念病棟」であるとか「茨城次郎記念ホール」といった ものがあるというのが一つの例になるかと思います。やはり寄附行為に対しては受ける側の感謝の気持ちを表すことが大変重要なことであると思います。筑波大 学附属病院でも寄附行為を行っていただいた個人や団体に対して何らかの御礼の気持ちを表すことを考慮中であり、そのようなご厚意に報いてより高度で良質な 医療の提供に向けて職員・教員が取り組んでいける環境が整備されると良いかと思います。
筑波大学附属病院では平成24年12月に新しい診療棟がオープンします。名前は「けやき棟」という親しみやすい名前になっており、これまでの A,B,Cというアルファベット棟からは少し脱却したように思います。けやき棟の一階には五十嵐病院長の発案で「市民交流プラザ(仮称)」が設置されま す。ここには附属病院の歴史や診療内容などを紹介するコーナーなども設け、さらには市民講座や各種のイベントを行うような地域社会や住民に開かれたスペー スとなる予定です。このような場所を整備するためにも附属病院では「寄附金」の受け入れなどを募集しております。パンフレットを整備して寄附金の使い方、 税制上の優遇措置、申し込み方法などを記載しており、附属病院のホームページから入手できるようになっております。また、ご寄附をいただいた方々のお名前 を病院内に掲示することも計画しております。筑波大学附属病院としては高度な医療をはじめとし、地域や社会との接点を大事にしていきたいと思いますので、 皆様のご理解とご支援をいただければと考えております。
※筑波大学基金は支援項目の一つとして2012年4月から附属病院支援事業(病院寄附金)を新たに掲げました。詳細はこちらをご確認下さい。
https://futureship.sec.tsukuba.ac.jp/prospectus/index.html
https://futureship.sec.tsukuba.ac.jp/prospectus/use.html